前回、ソウルの仁憲高校の生徒150名が学校側の偏向教育を批判する声明を出したことをご紹介いたしましたが、今回はその後の学校側とソウル市教育庁の対応をご紹介いたします。(上記写真はWikipedia「大韓民国の国旗」より引用しております)
生徒たちの声明対し、仁憲高校の校長も10月23日に記者会見を開き、生徒たちの主張を否定しました。さらに、全教組ソウル支部も10月24日、「一部の生徒が保守団体の政治的おもちゃになっている」と非難する声明を出すなど、生徒たちの行動を完全に否定しました。
こうした動きから、『讀賣新聞』(オンライン)では、「文氏の国政運営を巡る国論の分断が、教育現場でも起きていることがあらわになった」と指摘しています。
(讀賣新聞オンライン「校内で『反日』強要、韓国の高校生が抗議の会見」、2019年10月26日配信)https://www.yomiuri.co.jp/world/20191026-OYT1T50093/
さらに驚くべきことは、ソウル市の教育庁トップが学生たちを批判したことです。
ソウル市教育庁は約30日間、仁憲高校の生徒を対象に面接調査を行い、教師の問題発言が事実だったことを確認しました。しかし、「持続的な政治思想の注入がなく、特定の政治思想を押し付ける意図がなかった」として、特別監査を「実施しない」方針を発表したのです。生徒に「お前はイルベか」と暴言を吐いた教師に対しても懲戒処分しないとしました。
ソウル市のチョ・ヒヨン教育監はわざわざ別の立場文を発表し、政治偏向教育の議論を提起した仁憲高校の生徒に対して、「(問題を提起した)学生たちも省察すべきだ」と非難しました。
「彼らの意見も人類の普遍的価値、すなわち民主主義、人権、平和、正義などに照らし合わせて、同等に批判的に検討されなければならない。十分に検討されなかった(意見の)信念化は、独善に流され、自分と社会に非常に危険であることをぜひ念頭に置いてほしい」というのがソウル市教育長の見解です。
その一方で、不適切な発言をした教師に対しては「十分に理解できる」との立場を示しました。
「教育者として、一部の学生の親日的発言や嫌悪的で敵対的な発言を指導する過程で、偶発的に『イルベ』などの用語や『曺国ニュース』関連の発言があったものと把握される」とし、「教育者として十分に理解できる部分である」としました。
「思想注入」の教師を擁護したことは明らかです。
こうした教育庁らの姿勢を反映し、現在、思想偏向教育の問題を提起した仁憲高校の生徒たちは、集団いじめの危機に直面しています。
『朝鮮日報』などによると、2019年10月17日のマラソン大会の映像を学校側の偏向教育の押し付けの証拠としてネットに公開したA君(16歳)は、学校でいじめに遭い、現在、転校の手続きを進めているとのことです。この問題に先頭に立ったキム・ファラン君(18歳)も、校内でいじめを受けてソウル市教育庁に人権侵害救済を申請している状況です。
さらに問題を初めて公に提起したチェ・インホ君(18歳)は、仁憲高校によって学校暴力対策自治委員会に回付されました。これは、彼が公開したマラソン大会の映像に映っている女子生徒から「名誉毀損」という通報があったとして、懲戒処分を議論することにしたからだと言います。
なお、この映像に関しては、映像に登場する全ての人物をモザイク処理して投稿しており、人物の判定は出来ないはずだとチェ・インホ君は反論しています。
この様なことから、11月23日にソウル市鍾路区のソウル市教育庁前でキム・ファラン君ら仁憲高校の生徒8人が記者会見を開きました。
「チョ・ヒヨン教育監が真に民主的な教育監だとしたら、教育現場の主人公である生徒の正しい声に耳を傾けなければならない」と述べ、キム・ファラン君は記者会見の場で抗議の意から髪をそって丸刈りになりました。この「丸刈り」は、教育長の態度に対する抗議として行われました。
「ソウル市教育監は辞任せよ」…仁憲高生が抗議の丸刈り
写真引用元:『朝鮮日報』日本語版、2019年11月25日配信
https://news.livedoor.com/article/detail/17431605/
教育の自由民主を訴えた生徒たちが、社会によって弾圧に等しい仕打ちを受けた今回の事件は、韓国社会に全体主義が蔓延していることの証左ではないでしょうか。
韓国では今まさに、全体主義と自由民主主義が戦っているのです。ここで仁憲高校150名の生徒たちの声を黙殺することは、意見の多様性を認めない全体主義に賛同していることと同義です。
韓国の人々が生徒たちの声に耳を傾けてくれることを祈ります。
※その他参考にした引用元
『朝鮮日報』日本語版「生徒の反日偏向告発、仁憲高校内で「名誉毀損」論争」(2019年11月27日配信)https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191127-00080007-chosun-kr