西岡力会長の植村隆元朝日記者裁判の勝訴の件に関しまして

 雨の多い日が続いております。皆様如何お過ごしでしょうか。 ⇒【追記】東京高裁判決内容を解説いたします。

 6月26日(水)11:30に東京地裁にて、元朝日新聞記者である植村隆氏が西岡力会長に対して起こした裁判の判決が下されました。

 判決は勝訴。櫻井よしこ様の判決に続き、日本の言論が守られたと、私たち歴史認識問題研究会は安堵致しました。

 

 ところが、この西岡会長の勝訴判決の内容を歪曲して伝えようとする報道が出ております。共同通信が6月26日に配信した「東京地裁は26日、名誉毀損を認めた上で請求を棄却した。…裁判長は、植村氏が意図的に事実と異なる記事を書いたとした点は名誉毀損に当たると判断した一方『西岡氏らには公益を図る目的があり、論評の域を逸脱していない』として賠償責任を否定した」という記事です。これは、法律用語を正しく理解していない誤解を招く記事です。残念ながら、産経、朝日、読売、以外のほとんどの新聞は共同通信配信記事を使っているため、裁判で名誉毀損は認められたというおかしな印象が広がっています。

 

 裁判所は植村氏への民法上の名誉棄損を認めておりません。したがって、共同通信が報じている内容は正しく事実を伝えていないと強調しておきます。

 冷静になって考えれば、名誉棄損を認めさせる裁判で「名誉棄損が認められた」のに、肝心の「原告側の請求が却下された」というのは矛盾した話です。

 

 法律関係に不慣れな記者が書いたのか、或いは故意に書いたのかは不明ですが、歴史認識問題研究会としましては、裁判は民法上の名誉棄損を認めておらず、西岡会長の全面的な勝訴であったことを改めてここに明記するものであります。

 

 裁判所はあくまで、西岡会長の以下の3つの表現が植村氏の「社会的評価を低下させるものと認定」しただけです。

(1)金学順さんの経歴を一部書かなかったという点で意図的に事実と異なる記事を書いた、とする部分

(2)植村さんの義母は、韓国遺族会の幹部であったことから、植村さんが義母の裁判を有利にするために意図的に事実と異なる記事を書いた、という部分

(3)金学順さんが「女子挺身隊」として日本軍によって戦場に強制連行されたという事実と異なる記事を書いた、という部分

 ここで重要な点は、「名誉毀損の裁判では(a)公共性、(b)公益性、(c)真実性または真実相当性、の要件を満たせば、違法性は阻却される」ということです。

 今回の判決では特に、真実性・真実相当性の部分が中心になったとされています。裁判所の判断は以下の通りです。

  • (1)、(2)に関して

(1)の金学順さんの経歴を隠したという部分は、具体的には、金学順さんがキーセン(妓生)学校に通っていたという点です。

 キーセンは日本で言えば舞妓や芸妓に相当するがしますが、一部では娼妓的な役割の人もいたとされています。西岡会長の主張は、キーセンであることは日本軍による強制連行というストーリーに都合が悪いから、わざと省いたというものでした。

 判決は、韓国紙などで金学順さんがキーセンだったと報じられていることから、日本軍に強制連行されたとの印象を与えるために、植村氏がわざとキーセンのことに触れなかったと、西岡会長が推論したことには一定の合理性があると判断しました。

(2)の植村氏が義母の裁判を有利にするために意図的に事実と異なる記事を書いた、という部分に関しては、裁判所は植村氏の記事が出たタイミングを重要視します。金学順さんらの記者会見や提訴との近さを理由に、西岡会長の推論には一定の合理性があると判断しました。

 補足として、裁判所は(1)(2)ともに、西岡会長が長年、植村氏を名指しで批判していたにも拘らず、朝日新聞も植村氏も、2014年8月に検証記事を出すまで、反論や説明をしてこなかった。このことから、西岡会長が「自身の主張が真実であると信じるのはもっともなことといえる」とし、真実相当性を認めたのです。

 

  • (3)に関して

 また、(3)の「女子挺身隊として日本軍によって戦場に強制連行されたという事実と異なる記事を書いた」という点については、裁判所が「真実性」を認めました。

 裁判所は朝日新聞の報告書も参照しながら、「女子挺身隊」の表記は日本の組織・制度を想起させるとし、植村氏の記事は、金学順さんが「日本軍(又は日本の政府関係機関)により、女子挺身隊の名で戦場に連行され、従軍慰安婦にさせられたとの事実を報道するもの」と認定しました。

 裁判所は植村氏が「日本軍による強制連行」という認識はなかったのに、あえて事実と異なる記事を書いたとして、西岡会長の主張の真実性を認めたのです。

 この点は重大です。裁判所は植村氏が「意図的に事実と異なる記事を書いた」という西岡会長の主張が真実だと認めたのです。つまり、植村氏の記事がねつ造記事だと裁判所が断定したと言うことです。

 上記の通り、裁判所は(1)と(2)について、真実相当性がある、⑶について真実性があると認定しました。そしてこれらを前提とした西岡会長の主張については、意見・論評の域を逸脱したものとは認められず、「植村氏の社会的評価を低下させるものであったが、民法上の名誉棄損には当たらない」と判断したのです。

 

 西岡会長が裁判で勝訴するためには、その主張が真実であることを証明する必要はないのです。真実相当性、すなわち「自身の主張が真実であると信じるのはもっともなことといえる」ことを証明すれば十分なのです。

 しかし、今回の判決は、「植村氏が、日本軍による強制連行という認識はなかったのに、あえて事実と異なる記事を書いた」という西岡会長の主張が真実だと、踏み込んで認定しました。

 この裁判は西岡会長の全面勝訴であったことを、歴史認識問題研究会は強調しておきたいと思います。

                                                          (文責:長谷 亮介)

※画像は『正論 3月号増刊 歴史戦 虚言の韓国 捏造の中国』(2019年1月)のp.149より引用

【追記1】2020年3月3日 東京高裁の判決が下されました(こちらをクリックして下さい)

【追記2】東京高裁判決を解説いたします。