朱益鍾著『反日種族主義「慰安婦問題」最終結論』出版記念講演会

 6月15日と16日に歴史認識問題研究会は公開研究会「朱益鍾著『反日種族主義「慰安婦問題」最終結論』出版記念講演会」を開催いたしました。東京、大阪会場共に多くの方がご参加され、大盛況となりました。この場をお借りして、改めて感謝申し上げます。

 朱益鍾先生は日本と韓国で30年以上定着していた慰安婦問題の嘘を学術的に反論し、慰安婦は日本軍によって強制連行された証拠もなければ、性奴隷にされた証拠もないと断言しました。元慰安婦による証言の矛盾点や当時の資料を説明し、客観的事実を歴史研究者の立場から考察した朱先生の発表は大変説得力があるものでした。

 例えば、慰安婦として働ける年齢は法律上17歳以上でなければならず、慰安所に行くときには身分証明書や慰安婦営業許可願、親権者承諾書、戸籍謄本、印鑑証明書が必要であったことが明らかになっています。このことから、13~14歳の頃に慰安婦にされたという主張は根拠が無いことが分かります。また、慰安婦の家族や業者の同意が無ければ用意することができない書類が必要であったことから、日本軍による強制連行も説得力がありません。
 貧困の家庭と慰安所業者が契約を交わし、女性が慰安所で働くことを承諾した後に業者は女性家族に多額の金額を渡しました。慰安婦となった女性は前借金をすることで、働きながら返済していくという契約労働だったのです。借金があるうちは売り上げの13%が慰安婦の収入になり、完済後は50~60%が自身の報酬となったといいます。
 むしろ日本軍が関与することによって、慰安所の業者は慰安婦から金銭を搾取するといった不当な行為ができなくなりました。その結果、文玉珠や金安守といった慰安婦は現在の価値で1億円から2億円を稼いだことが判明しており、金は朝鮮半島に1,000円(当時の金額)近くを送金しています。

 さらに、朱先生は2018年に開かれた日本軍による慰安婦虐殺映像公開シンポジムに言及し、資料の捏造を指摘しました。ソウル大学人権センター長の鄭鎮星は英語文書を歪めて慰安婦は日本軍に殺されたという何ら根拠のない主張を展開して歴史の嘘を拡散したと朱先生は批判しました。


       朱益鍾先生(東京会場)

 最後に、朱先生は今回の自著出版にあたり、今まで慰安婦性奴隷説を唱えてきた人々は本書を読んで何らかの意見を表明してほしいと述べました。日本語訳も出版されたので、慰安婦は強制連行されて性奴隷に堕とされたと主張した日本人の歴史研究者や弁護士たちは自分たちの言動に対する責任を持ってもらいたいところです。

 今回の公開研究会では西岡力会長も講演し、誰が・何の目的で日本軍が朝鮮半島の女性を強制連行して性奴隷にしたという歴史の嘘を広めたのか、という視点で話をしました。西岡会長が1991年に韓国で慰安婦強制連行に関する調査を行った時点では、日本統治時代における朝鮮半島の実情を知っている世代がいました。韓国の野党国会議員や新聞編集者から「何を馬鹿なことを言っているんだ」と逆に叱られ、「日本軍ではなく女衒(ぜげん)がやったに決まっているだろう」と言われたことを回想しました。


        西岡力会長(東京会場)

 しかし、日本の朝日新聞や反日研究者、反日弁護士たちの左翼集団が元慰安婦を探して訴訟をけしかけたことで韓国でも韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)が発足し、歴史の嘘が広がりました。このようなことになった背景には、1991年に社会主義の本山であるソ連が崩壊したことが挙げられます。戦後から日本の左翼たちは資本主義を否定し、日本やアメリカを批判していました。人類の歴史は資本主義から社会主義に進歩し、ソ連や共産党の思想を理解し推進する自分たちは「進歩的知識人」であると自称していました。しかし、ソ連が崩壊して冷戦が終わったことで、日本人左翼たちは自身の考え方が正しくなかったという現実を突きつけられました。
 本来であれば、左翼はこのときに反省をしなければなりませんでした。しかし、彼らが行ったことは反省ではなく、次のターゲット探しでした。日本左翼は資本主義から過去の日本政府にターゲットを変更し、現代の日本を攻撃し始めました。その最初の運動が慰安婦問題であったと西岡会長は考察しています。日本の左翼は「進歩的知識人」から「良心的日本人」へ転身し、自身の正当性を保とうとしたのです。

 韓国では未だに慰安婦は性奴隷ではなかったと主張すれば、社会的地位を奪われてしまう危険性があります。そのような状況でも一次史料を用いて歴史の事実を広めるために書籍を刊行した朱先生に会場からは敬意を表する拍手が沸き起こりました。
 公開研究会の内容は9月下旬発行予定の『歴史認識問題研究』第15号に掲載いたします。より多くの人々に朱先生の研究を知って頂きたいと願っています。