2022年7月11日 歴史認識問題研究会佐渡視察報告

       有名な道遊の割戸前にて記念撮影(2022年7月11日)

皆様

 歴史認識問題研究会は7月9日と10日に日韓学術講演会「佐渡金山と朝鮮人戦時労働者」を東京と新潟で開催いたしました。韓国より『反日種族主義』の共著者である李宇衍博士をお招きしての講演会は二会場とも大盛況に終わりました。暑い中、会場までお越し下さった皆様には改めて御礼申し上げます。

 講演会の全日程が終了し、7月11日に私たち歴史認識問題研究会は佐渡視察も行い、李博士も同行されました。
 「きらりうむ佐渡」、「佐渡金山」、「佐渡金山資料館」、「北沢浮遊選鉱場跡」、「新五郎町住宅8・9号棟(当時の鉱山労働者社宅)」を視察し、当時の佐渡金山の環境や労働者の生活を確認しました。

 

写真1:きらりうむ佐渡にて、戦時期の佐渡金山の街並みを確認する西岡力会長(写真左側)と李宇衍博士(写真右側)

 

 

 佐渡金山では職員の方の説明も受けながら坑内を見学しました。職員の方のお話でも、佐渡金山は岩盤が硬いので落盤事故はほとんど起こらなかったそうです。実際に見学してみて、相当に頑丈な層であることが納得できました。

 

写真2:佐渡金山内の岩盤

 

 

 2022年に韓国で開催されたセミナーでは佐渡金山内に転がっている大きな岩の写真を掲載し、落盤事故が頻発していたかのように印象付けています。しかし、学術的見地に立っても、佐渡金山の岩盤は硬く、落盤の危険性が少なかったことは明らかです。写真3のように大きな岩が坑内で見受けられるのは、発破による当時の削岩作業の名残であると思われます。

 

 

写真3:佐渡金山内にある大きな岩

 

 

 佐渡金山の資料館によれば、硬い岩盤を削るために重機を使用して岩に穴をあけ、そこにダイナマイトを埋め込んで爆破させていたとのことです。毎日のように落盤が起きていたという韓国人証言が如何に信ぴょう性がないかを立証しています。

 

写真4:昭和初期の削岩作業の様子(資料館より)

 

 

 また、当時の鉱山労働者社宅跡にも訪れました。新五郎町住宅8・9号棟は日本人家族用社宅と朝鮮人独身用社宅(第一相愛寮)です。前者は写真5に写っているように、ある程度当時の様相を残しています。後者は当時の建物は現存せず、戦後の拘置支所が残っているのみです。

 

写真5:当時の面影を残す日本人家族用の社宅跡

 

 

 日本人家族用社宅は内部を見学することが可能です。写真6で確認できるように居間にあたる場所は六畳の広さがあります。一次史料では、朝鮮人も日本人同様の待遇でしたので、朝鮮人家族にも同様の社宅が無料で貸し出されていたことと考えられます。

 

 

写真6:日本人家族用社宅の内部

 

 

写真7:この扉を閉めることで2世帯が一つの社宅に住んでいた。

 

 

写真8:朝鮮人独身用社宅(第一相愛寮)は戦後に解体され、相川拘置支所となった。

 

 

 興味深い点は、この社宅の近くに共同炊事場があり、そこで鉱山へ向かう労働者たちに弁当を渡していたということです。写真9は『佐渡相川の鉱山都市景観保存調査報告書』(平成27年3月31日、佐渡市世界遺産推進課 発行)に掲載されている戦時中の朝鮮人労働者の社宅分布図です(70頁)。ここで、朝鮮人労働者も日本人と一緒に弁当を渡されていたことが考えられます。

 第一相愛寮から共同炊事場まで多少距離があるように見えますが、私たち歴認研が実際に歩いてみたところ1分も掛からないところにありました。寮から鉱山まで片道1時間30分も掛かったという証言はこの視察でも嘘であることが分かりました。参考までに、この第一相愛寮から鉱山までは20分ほどで到着すると職員の方より説明を受けました。

 

 

写真9:戦時中に存在した朝鮮人寮、社宅の分布図。(出典:『佐渡相川の鉱山都市景観保存調査報告書』、p.70)

 

 

写真10:共同炊事場跡

 

 

 

 今回の視察で判明した事柄は以下の点を挙げることができます。

①佐渡金山の岩は非常に硬く、重機を用いた発破により掘っていた。落盤の危険性はほとんどなかった。

②日本人と朝鮮人の社宅は隣り合っていた。朝鮮人差別が存在していたのであればもっと離して住居を建設したであろう。しかし実際は、日本人と一緒に弁当を渡されていたことも窺える。

③朝鮮人寮、社宅から鉱山までは遠くなく、20分から30分ほどで鉱山に到着できる距離にあった。

 

 この視察により、佐渡金山が朝鮮人労働者に強制労働の現場ではなかったことがより明確に否定できたと確信しました。暑い中、私たちと同行し、説明をしてくださった職員の方に改めて感謝申し上げます。

 歴史認識問題研究会は今後も佐渡金山の研究を精力的に行ってまいります。