慰安婦判決に抗議する歴認研声明

 1月8日、韓国のソウル地方裁判所は、日本国に対して韓国人元慰安婦ら(遺族を含む)12人に1人あたり1億ウォンの賠償を払えという判決を下した。日韓関係の根底を揺るがす不当判決であり強く抗議する。

 そもそも、国際法上の主権免除により、日本国が他国の裁判で被告になることはあり得ない。日本政府は韓国の文在寅政権に対してその立場を伝えていた。ところが、ソウル地裁は訴えを却下せず「公示送達」(日本政府が受け取りを拒否していた訴状を掲示して受け取ったと見なすこと)という便法を使い判決を下した。国際法違反であり、認められない。

 判決では「この事件の行為は、日本帝国によって計画的、組織的に広範囲に強行された反人道的犯罪行為で国際的な強行規範※に違反したものであり、当時日本帝国によって不法占領中であった韓半島内でわが国民である原告たちに対して強行されたものである」として、主権免除を適用できないとした(※国際法上いかなる逸脱も許されない規範)。

 しかし、慰安婦制度は、当時は合法であった公娼制の一環であり、「反人道的犯罪」ではないから、判決の前提となる事実認識は間違っている。朝鮮人慰安婦を募集したのは民間業者であり、また、彼女らが働いた慰安所の経営者も民間人だ。その両者の中には多数の朝鮮人が含まれていた。日本軍は慰安所の設置、慰安婦の移送、業者が不法を行わないようための管理、性病を防ぐ衛生などで関与しただけだ。

 現時点では日韓両国で公娼制は非合法だ。日本人であれ朝鮮人であれ、親の借金のために娘がそのような職業に就かざるを得なかったことは、現在の価値観から見れば人権侵害であり、同情に値する。その立場から、日本は韓国の元慰安婦に対して繰り返し謝罪し、人道的支援を行った。

 日韓両国は1965年の請求権協定で慰安婦問題を含む日韓間の財産・請求権の問題は、「完全かつ最終的に解決済み」と合意した。また、日韓両国は慰安婦問題について、2015年の日韓合意において「最終的かつ不可逆的な解決」を確認している。なお、原告12人のうち6人は2015年の合意に基づき日本政府が出資して作られた財団から支援金を受け取ったという。彼女たちに福祉的支援がまだ必要なら韓国政府が行うべきだ。

 今後、日本国の在韓財産が差し押さえられる事態が起きるなら、日韓関係は国交正常化以前に戻らざるを得ない。韓国政府が早急に国際法違反状態を是正する国内措置を執るべきだ。それなしには日韓関係の発展はありえない。

 日本政府は国際法上の主張だけでなく、慰安婦の歴史的実態に関する国際広報をより一層強めるべきだ。外務省のホームページでは昨年11月、韓国語で慰安婦について「強制連行、性奴隷、20万人」という虚偽に対する反論が掲載された。官民が協力して韓国と国際社会にその主張を広める努力をすべきだ。

 韓国でも国際法を尊重し、歴史的真実を認める立場から判決を批判する声が上がっている。私たちはそのような韓国良識派と力を合わせ、慰安婦を含む日韓歴史問題ではびこるウソと戦い続ける。

                          令和3年1月9日   歴史認識問題研究会会長 西岡力