正義連の不正を擁護し、元慰安婦女性たちの尊厳毀損を黙認する声明が日本の市民団体から出される

皆様

 韓国では今、慰安婦支援団体である正義連で理事長を務めていた尹美香(ユン・ミヒャン)氏の不正疑惑が多く報じられています。
 そのような中、「日本軍『慰安婦』問題解決全国行動」という日本の市民団体から正義連や尹美香氏を擁護し、日本政府を批判する声明が出されました。

 

 「日本軍『慰安婦』問題解決全国行動」(以下、全国行動)とは、2010年2月7日、日本軍「慰安婦」問題解決のために全国各地で活動してきた団体と個人が集まって結成したネットワークです。全国9ブロックに連絡先を置き、全国的なネットワークの強みを生かした活動を繰り広げています。

 各ブロックにおいて地元議員への説明・働きかけを実施するとともに、院内集会や市民集会を開催して日本軍「慰安婦」問題の解決を国会議員や市民にアピールする一方、教育用DVDを製作して教育機関に贈呈するなどの広報活動もおこなってきました。また、国連人権理事会の普遍的定期審査(UPR、2012年10月)、国連女性の地位委員会(CSW、2013年3月)、国連拷問禁止委員会(2013年5月)に代表を派遣して国際世論に訴える活動もおこなっています。

共同代表は梁澄子氏、柴洋子氏で、2011年12月14日段階で日本の273団体が賛同しています。

「日本軍『慰安婦』問題解決全国行動」HP

 

 以下が、全国行動が発表した声明の内容となります。

 

 

  真に謝罪すべきは誰なのだろうか。李容洙ハルモニの苛立ちと不満は誰に向けられたものなのだろうか。 30年間、
  被害事実の認定と心からの謝罪、それに基づく賠償、たゆまぬ真相究明と教育等の再発防止策が求められてきたに
  もかかわらず、未だその声に応えることが出来ていない日本政府にこそ、被害者をこのような状況にまで追い詰め
  た責任がある。
(中略)

  一部韓国メディアは悪質なでっち上げ報道を直ちにやめるどころか、この李容洙ハルモニの哀切な訴えを利用して
  、尹美香前代表や正義連が明確な説明を繰り返しても「疑惑」があり続けるかのように印象づけようとする一部韓
  国メディアの報道が日増しに度を超している。(中略)

  最後に、日本政府の責任履行という被害者たちの切実な願いを未だ実現させることができていない日本の市民とし
  て、李容洙ハルモニをはじめとする各国の被害者、亡くなった被害者たちに心からのお詫びを申し上げる。今後も
  、私たちは李容洙ハルモニの同志として、共にあることを伝えたい。

                        2020年5月13日 日本軍「慰安婦」問題解決全国行動
                        共同代表 梁 澄子、柴 洋子

 

 上記の声明文を読んで疑問に思うことは、李容洙氏は明らかに正義連や尹美香氏に対して不満をぶつけているにも拘らず、それを日本政府に擦り付けている点です。彼女の「正義連の寄付金使途不明」、「寄付金が元慰安婦のために使われていない」、「証言集で自身の内容を改竄された」等ということに日本政府がどのように関連するのでしょうか。

 また、尹美香氏を始めとした正義連が明確な説明をしているという主張にも無理があります。明細の公開を求める韓国の記者らに対して、「自分たちにも人権がある、どの市民団体が会計を公開するか」と言い放って、開き直ることを「明確な説明をしている」とは言えません。

 全国行動は今後も李容洙氏と同志として共にありたいと結んでいますが、正義連を批判するどころかその不正を隠蔽・擁護している段階で李氏を切り捨てているも同然ではないでしょうか。

 何故、このような元慰安婦の気持ちを顧みない声明が出現したのでしょうか。今回は、日本の中に存在する慰安婦支援団体の実態に迫っていきたいと思います。

 

「文喜相案」にも反発した「日本軍『慰安婦』問題解決全国行動」

 全国行動は「『文喜相案』の即時破棄と被害者中心主義の原則に則った日本軍性奴隷制問題の解決を求める世界良心宣言」という正義連が出した声明(2019年12月4日)を2019年12月22日に掲載しています。全国行動のほかに日本の12団体の名前が併記されています。

「文喜相案」とは、韓国国会の文喜相(ムン・ヒサン)議長が2018年10月以来日韓における最大の懸案事項となっている「元徴用工問題」を解決するためにまとめられたとされる法案の草案です。

 この中には慰安婦問題も含まれており、「これまで持続的に発生してきた強制徴用の被害者および『日本軍慰安婦』女性の問題など日韓の間の葛藤を根源的に解決する『包括立法』」であると位置づけています。

 上記被害者への賠償基金の財源として、(1)日韓両国の関連企業の自発的な寄付金、(2)両国の民間人たちの自発的な寄付金、(3)活動が終了している『和解治癒財団』に残っている約60億ウォン、(4)それ以外の寄付金と収入、を挙げています。

 この「文喜相案」に全国行動は反対の声明を出しました。理由としては、以下の点を挙げています。

 

 

  「文喜相案」は、強制動員および日本軍性奴隷制問題のような反人道的な戦争犯罪を、政治的・外交的な立場にの
  み基づいて、問題解決をするという美名の下に、日韓政府の財源、日韓の企業と国民の募金で財団を作り、見舞い
  金のみを支給しようとするものである。 さらに「文喜相案」が懸念されるのは、文在寅政府が2018年1月に、手続
  き上も、内容的にも、被害者中心主義の原則に背く重大な欠陥があると明らかにした2015日韓合意が有効であるこ
  とを確認するという内容が包含されている点だ。

 

「慰安婦」被害者中心主義とは何なのか

 上記の声明は以下のように続きます。

 

 

  私たちは30年間、正義の解決を求めて「1000億ウォンをくれるとしても、見舞い金を受け取ることはできない」と
  言った金福童ハルモニをはじめとする被害者たちの名誉を毀損し、
加害国に免罪符を与える「文喜相案」が解決策
  であるかのように議論される現在の状況をこれ以上、座視することはできない。今、大韓民国の国会と政府がなす
  べきことは、見舞い金の支給による対日過去史問題の一括妥結という低級な方式の妥協案の提示ではなく、被害者
  中心主義の原則に則った犯罪の認定、公式謝罪と法的賠償の履行による問題解決のために
2018年7月、性平等基金の
  予算で策定した日本政府の見舞い金10億円に相応する103億ウォンを返還措置し、日本軍「慰安婦」被害者たちの人
  権と名誉回復のために
「日本政府に犯罪の認定と責任の履行を求めること」である。

 

 

 しかし、元慰安婦の一人(Aさん)は当時挺対協の代表だった尹美香氏から2015年の日韓慰安婦合意によって決定した1億ウォンの慰労金を受け取らないように説得されたと話しています。

 当時の生存慰安婦被害者47人(2015年12月28日合意の基準)のうち、36人が現金支給を受け取る意思を示したとあります(『中央日報日本語版』2019年6月10日)。しかし、実際に慰労金受け取れた人数は34人(35人の報道あり)でした。

 

 2020年5月11日の『中央日報日本語版』では、1995年の「女性のためのアジア平和国民基金(アジア女性基金)」が韓国の慰安婦被害者に各500万円の金銭的償いを行うとしたが、挺対協等は日本政府の法的責任を前提としたものではないとし反対した。韓国政府も慰安婦被害者に対し、アジア女性基金の代わりに各4300万ウォン支援することで尹氏に同調した。それでも当時、アジア女性基金からのお金を受け取った被害者が7人いたが、そのうちの1人がAさんだった。7人はまるで裏切り者の烙印を押されたように大きな苦しみを味わった、と伝えています。

 

 上記の『中央日報』では7人と伝えていますが、実際は61人でした。

 これは韓国政府に登録され生活支援を受けてきた元慰安婦236人のうち26%にあたります。

 

 

  9 韓国における「基金」事業の終了と成果

  (1)1995年に設立された「基金」には,基本財産への寄附を含め約6億円の募金が集まり、日本政府は、インドネ
  シアでの事業をもって事業全体が終了する2007年3月末までに拠出金・補助金あわせ約48億円を支出した。韓国にお
  ける事業としては、事業終了までに、元慰安婦合計61名に対し、民間による寄付を原資とする「償い金」200万円を
  支給し、政府拠出金を原資とする医療・福祉支援事業300万円を実施(一人当たり計500万円)するとともに、これ
  らを受け取ったすべての元慰安婦に対し、当時の総理の署名入りの「お詫びの手紙」をお渡しした。その数は、橋
  本政権下で27件、小渕政権下で24件、森政権下で 1件、小泉政権下で9件に及ぶ。

   河野談話作成過程等に関する検討チーム「慰安婦問題を巡る日韓間のやりとりの経緯 ~河野談話作成からアジア
   女性基金まで~ 」(2014年6月20日、p.20~21)

 

 同様のことを産経新聞記者の黒田勝弘氏も指摘しています。

 

 

  基金の支援を受けとった人数はこれまで非公表だったが、実際は61人いたことが分かった(日本大使館筋)。基金
  を推進した和田春樹・東大名誉教授は後に「過半数には及ばなかった」と振り返っているが、実際は、当時の30~
  40%が日本の措置に賛同していたことになる。

  基金からの支援を受け取った元慰安婦たちは支援団体から村八分的に排除された。人道支援を拒否し、あくまで日
  本政府に対する「法的(国家的)謝罪」と「国家補償」を執拗(しつよう)に要求する現在の運動は、残った拒否
  者と支援団体で続けられた。対日強硬派の支援団体が問題解決の大きな障害になっていることが分かる。

  (『産経新聞』2013年1月19日、「【緯度経度】ソウル・黒田勝弘 対日強硬派、解決阻む」)

 

 

 1995年では生存慰安婦(当時)の約3割がお金を受け取り、2015年では約7割の人が慰労金の受け取りを希望したのです。この点を考慮すれば、「慰安婦」被害者中心主義とは元慰安婦の方々にお金を早急に配ることではないでしょうか。「『慰安婦』被害者たちの人権と名誉回復のために『日本政府に犯罪の認定と責任の履行を求める』」行動はその後でも出来ることです。

 ところが、尹美香氏は「お金を受け取らないように」と真逆の行動を起こしました。

 こうした挺対協(正義連)の行為に憤慨した元慰安婦の方々が行動を起こした事例があります。2004年1月に沈美子(シム・ミジャ)氏など慰安婦被害者33人は「慰安婦を二度泣かせた挺対協、門を閉めろ」というタイトルの批判声明を発表しました。

 

 声明では2つの問題が挙げられています。

1、挺対協が「慰安婦被害者の人権回復」とは正反対の道に進んでいる

2、慰安婦問題を口実に自分たち(挺対協)の富貴と栄華を享受している

 

 被害者らは「(挺対協は)慰安婦おばあさんを二度泣かせた」、「いつ死ぬか分からない慰安婦被害者を歴史の舞台に物乞いとして売り、腹を肥やしてきた悪党」、「15年間慰安婦の人権回復のために何もしなかった。反対に人権蹂躪はあなた方から受けた」という表現まで使っています。

 

 挺対協(正義連)を擁護する声明を出した全国行動は、このような事実を把握しているのでしょうか。

 

 今や、多くの慰安婦支援団体の目的は、日本政府に謝罪させて賠償金を支払わせるための活動こそが目的になっているのではないでしょうか。日韓でベストセラーとなった『反日種族主義』も挺対協について「真面目に慰安婦問題を解決するのではなく、この問題を利用して韓日関係を破綻させるのが彼らの本当の目的」(日本語版p.323)と説明しています。

 このことは日本の市民団体にも当てはまると考えられます。

 

正義連と密接な関係を持つ日本の市民団体

 そもそも正義連とは、2018年7月16日に「韓国挺身隊問題対策協議会」(挺対協)と「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶財団」(正義記憶財団)が単一法人として運営され、「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(正義連)の新名称で活動することになったことが始まりです。初代の統合理事長が尹美香挺対協常任代表でした。

 日本では正義連(挺対協、正義記憶財団)と深く結びついている市民団体が多く存在しています。

 代表的な団体として、「希望のタネ基金」をご紹介したいと思います。

 

「希望のタネ基金」とは、日韓の若者の交流と記憶継承事業を通し、次世代の希望を育てることを目的として、韓国で2016年6月9日に設立された「正義記憶財団」の募金キャンペーン事業の一環として、日本の市民が主体的に立ち上げた団体です。代表理事は全国行動の共同代表でもある梁澄子氏です。

 

 下の組織図を見て頂けると、正義連に関係する組織に複数の事業や団体が絡み合うように関係を築いていることが分かると思います。

https://www.kibotane.org/about-usより引用

 

 

 このような組織が形成されてしまったため、正義連に関与している市民団体にとって李容洙元慰安婦の告発は不都合な事かもしれません。今までの資金が不正(寄付金の横領等)で不当(証言内容の改竄等)なものだったと認めてしまうと、何らかの責任を取る必要性が出てきます。

 特に、「希望のタネ基金」では「助成金プロジェクト」を行っていました。このプロジェクトとは、若者たちが日本軍「慰安婦」問題に関連したイベント等の企画をした場合に、1件につき10万円以内で助成する「若者企画助成」のことです。スタディツアー事業や留学支援事業も含まれていました。

 

 「元慰安婦のための救済や事業」を謳っていながら、多くの元慰安婦を無視してきたという実態が判明した現在、日本の市民団体の人々は何を考えているのでしょうか。

 本来であれば、「元慰安婦の女性たちのために」正義連の不正を糾弾し、自分たちの活動が正しかったのかを考え直すべきではないでしょうか。

 正義連の不正を隠蔽・擁護し、日本に責任を求める主張は「正義」から逸脱した行為です。残念ながら、日本の中にも慰安婦問題を迷走させ、元慰安婦の女性たちを傷つける人々が大勢いるようです。

 

 私たち歴史認識問題研究会は歴史の真実を追求し、元慰安婦の方々の真の救済を目指して今後も慰安婦問題に取り組んでまいります。
                                         (文責:長谷亮介)