台湾総統選挙に関しまして。(追記あり)

(台北郊外の新北市で開いた選挙集会で演説する蔡英文総統=2019年12月1日 写真提供:産経新聞社)
 https://www.1242.com/lf/articles/223434/?cat=politics_economy&pg=cozyより引用

 

 2020年もスタートし、皆様忙しい日課を送られていることかと思います。

 その様な中、安心するニュースがございました。

 

 1月11日の台湾総統選挙にて、台湾独立志向派である民進党の蔡英文氏・頼清徳氏らが当選いたしました。

 一時期は中国追従派の国民党が政権を取ってしまうのではないかと危惧されていましたが、大きく差をつけての結果となりました。

 この点は、前年の香港の問題や中国のウイグル人弾圧の報道が大きく作用したと思われます。
 以下より、台湾の中信金融管理学院の梅原克彦教授より頂いたデータを掲載いたします。

 

第15代総統・副総統選挙結果 (1月12日付「自由時報」より)

 蔡英文・頼清徳  8,170,231票(57,13%

  韓國瑜・張善政  5,522,119票(38,61%

  宋楚瑜・余湘     608,590(4,26%

 

選挙人数 19,311,105

投票人数 14,464,571

投票率  74,90%

 

第10回立法委員選挙結果 (1月12日付「自由時報」より)

 各政党当選者数(カッコ内は前回と比較しての増減。)

民進黨  61  (-7)  (選挙区48 比例区13) 

國民黨  38  (+3)   (選挙区25  比例区13

民衆黨   5  (+5)  (選挙区 0  比例区5

時代力量  3  (-2)  (選挙区0 比例区3

台湾基進黨 1  (+1)  (選挙区1 比例区0(※)陳柏惟候補 (台中第2選區)

無黨籍   5  (+5)  (選挙区5  比例区0(※)うち一人は、元・時代力量の林昶佐(Freddy Lin)候補(台北第5選區)

 

 しかし、梅原克彦教授は、「必ずしも大勝とは言えない」と考えております。

 それは、比例区では台湾独立志向派と中国追従派の議席が事実上拮抗しているからです。

 立法委員選挙については、民進党は単独過半数を維持(定数113議席のうち61議席を獲得)しました。また独立志向の「時代力量」から3名、元「時代力量」のFreddy 林(無所属)、独立志向の新しい政党「基進党」から(初めて)1名当選しました。これにより、(民進党61議席、時代力量3議席、台湾基新党1議席、無所属候補者のうち元時代力量の林昶佐候補ならびに民進党に比較的近いと思われる2人の候補の3議席の合計68議席が(程度の差はあれ)「独立志向勢力」全体の議席数になります。この点を見ると、「独立志向勢力」が引き続き「安定多数」(全議席113議席のうち68議席)を確保したと言えます。

 しかし比例区の議席数、得票率を見ると、民進党が13議席(33,97%)、国民党が13議席(33,35%)とほぼ均衡しています。依然として国民党の「地力」は決して侮れない、とのことです

 

 梅原教授はさらに指摘します。台北市長の柯文哲氏が、次期総統選挙(2024年)の自らの総統選挙出馬を狙って、今回は立法院でのキャスティングボートを握るべく昨年立ち上げた「台湾民衆党」が5議席を確保したことで(比例区の得票率11,22%)、立法院に確固たる足場を築きました。

 (今回、総統選挙出馬を見送った)柯文哲氏は、(同じく総統選挙出馬を断念した)「鴻海」の郭台銘氏とともに、次期総統選挙に向けて、無視できぬ存在になると梅原教授は考えています。

 台湾は4年後にも試練が待っていると言えます。万が一、国民党が政権を取れば、台湾の中国属国化が実現してしまいます。そうなれば、次は沖縄が本格的に狙われることになります。中国は着々と他国の経済水域を侵食しています。

 台湾の政権が独立志向を持っていなければ、これを食い止めることが出来ません。私たち日本人は、今後も台湾を応援し、中国の侵食に対して共に戦っていかなければなりません。それを考えると、「4年後に台湾と日本にとっての大きな試練が待っている」と改めて認識する必要があるでしょう。

 

※追記(2020年1月12日)
 ご紹介した梅原克彦教授より、無所属候補5名の詳細な内容を頂きました。

1.立法委員選挙の選挙区で当選した5人の無所属候補の内訳は以下の通りです。

・台北市第五選區 林昶佐Freddy Lin)前回は「時代力量」から出馬し当選。今回は「時代力量」を離党して無所属で立候補。
(※)なお、選挙戦最終日の1月10日(金)夕刻には、蔡英文・頼清徳両候補と一緒に、民進党本部前の「練り歩き」に参加。

・桃園市第六選區 趙正宇 (国民党候補との一騎打ちで当選。)

・屏東縣第二選區 蘇震清(国民党候補を抑えて当選。民進党からの立候補者はいない。)

・花蓮縣     傳崐萁(民進党、国民党の候補を抑えて当選。)

・山地原住民   黄金素梅(「反日」で悪名高い。)

2.上記のように、これら5人の無所属当選者のうち、蔡英文政権ないし民進党に近いスタンスの議員は、林昶佐、趙正宇、蘇震清の3人かと考えられます。

3.従って、民進党の61議席に加えて、民進党とスタンスの近いと考えられる当選者の数を合計すると、

①    民進党  61議席

②    時代力量  3議席

③    台湾基進党 1議席

④    無所属   3議席(上記の林昶佐、趙正宇、蘇震清の3人)

合計68議席

となり、立法院の全議席が113議席ですから、議席数だけに着目するならば、まずは「安定多数」と言っても差支えないでしょう。