(写真提供:歴史認識問題研究会)
本日、2019年12月23日に歴史的な会見が開かれました。
日本と韓国の弁護士たちが2018年10月30日の韓国大法院判決を批判する共同声明を発しました。これまで、大法院判決を支持する日韓弁護士団の声明はありましたが、抗議の共同声明は初めてのことです。日本では弁護士会館5階にて発表いたしました。
日韓関係を破壊する大法院判決に対して堂々と抗議の声を上げることが出来るようになったのです。両国の将来を真剣に考え、行動する人々が増えてきたことの証明であると思います。記者会見の映像も公開致しますので、今しばらくお待ち下さい。
以下、発表された共同声明(日本語)の全文を掲載いたします。ページ下部に同声明文をダウンロードできるリンクもお貼りしております。なお、共同声明文は許可申請なしで使用しても構いません。何卒拡散をお願い申し上げます。
1965年日韓請求権協定の尊重を求める日韓法律家共同声明
我々は、1965年日韓請求権協定の尊重を通じた国際的友好関係の再構築を求める。
1965年日韓請求権協定は、日韓両国はもちろん、両国国民が、政治・安全保障・経済・文化の各側面で相互協力と友好関係を確かにすることができた基礎となってきた。
しかるに韓国大法院は、2018年10月30日の大法廷判決において、第二次世界大戦中における旧日本製鉄の韓国人労働者が新日本製鉄住金(現・日本製鉄株式会社)を被告として提起した訴訟で一人当たり1億ウォンの慰謝料の支払いを認める判決を宣告し、この判決に基づき新日本製鉄住金の韓国内資産に対する韓国裁判所の強制執行が開始された。 これによって1965年日韓請求権協定が土台となって維持されてきた友好協力関係の基礎を揺るがす結果を招いた。 この大法院判決は日韓関係に大きな亀裂を生じさせ、戦後最悪と評される日韓関係の悪化をもたらす重大な要因となった。
この現状に対し、法的・政治的に適切な対処を怠るならば日韓関係は決定的な破局に至る懼れがある。それは日韓両国の国民にとって深刻で重大な不幸をもたらすだろう。今や両国国民はかかる破局を回避することができるよう知恵を尽くさなければならない。
日韓両国の法律家である我々は、両国関係を真剣に憂慮し、法律家の立場から両国の政府および司法関係者が賢明な対応と措置をとることを求めて以下のとおり声明する。
第1 第二次世界大戦中に韓国人労働者らが受けたと主張する損害などに関する請求権は、1965年日韓請求権協定で国際問題としては完全かつ最終的に解決されたものであって、韓国大法院判決が認容した慰謝料請求権もこれと異なるものではない。この立場は、日本国最高裁判所平成19(2007)年4月27日判決、並びに、韓国大法院判決における権純一、趙載淵両大法官の反対意見と基本的に同じものである。我々はこの立場を国際法的に正当なものと考える。
第2 韓国大法院判決は、原告らが大日本帝国による「不法で反人道的な植民地支配」の被害者であるとし、かかる被害によって原告らが受けた苦痛に対する慰謝料請求権は日韓請求権協定により処理された請求権には含まれないと判示した。しかし、かような歴史解釈は、アヘン戦争から第二次世界大戦まで一世紀に及ぶ期間の世界的な国際関係を含む大きな枠組みの下で、十分な客観的資料に基づき、冷静で自由な批判が可能な歴史研究によって解明されるべき問題である。歴史的真実は、自由な批判が保障される中で冷静な分析によって歴史家たちが糾明しなければならない。現に、日本ではもちろん韓国の歴史学者からも、このような歴史解釈に対して有力な異論が提起されている。そして、司法府が特定の歴史解釈を下すことは、法解釈の側面においても学問研究の側面においても、決して望ましいものではない。
第3 1965年日韓請求権協定は、その締結に至るまで13年間にわたり日韓両国が多大な努力を傾けた交渉の過程を通じて締結された歴史を持つ。 この国際協定は、両国及び両国国民間の請求権に関する問題が「完全かつ最終的に解決された」ことを明示的に確認している。 同協定は、その後における両国の友好関係と発展の基礎となった。国際条約はそれぞれの立場や期待を踏まえつつ、双方当事国が互いに譲歩する努力によって成立するものであり、同協定もそうした例に漏れるものではない。我々は、同協定の趣旨を尊重することが、将来にわたって、両国の友好関係と発展を保証する唯一の道であると確信する。
第4 日韓両国は、それぞれの国民の国内外の私有財産権を保護する国家的責務があり、このような各国の立場を互いに尊重しなければならない。韓国政府は、1965年日韓請求権協定を根底から覆す大法院判決に基づく日本企業に対する強制執行に対し、同協定を尊重する立場からこの問題の処理に直接あたらなければならない。新日本製鉄住金に対し訴訟を提起した原告らが主張する請求権は韓国の国内問題であって、韓国政府の責任の下に処理されなければならない問題である。韓国政府及び司法当局は、大局的な見地に立って本判決に基づく強制執行を停止し、1965年日韓請求権協定の精神に立ち戻った解決の道を探るべきである。日本政府は、韓国政府がかかる解決の道を見出すことができるよう、可能な限りの支援を行うべきである。
我々は、日韓両国の政府及び司法関係者が、両国関係の破局を回避して真の友好関係を再構築することができるよう最大限の努力を尽くすことを求めて、日韓両国の法律家として互いに連帯し、以上のとおり声明する。
令和元(2019)年12月23日
日本側
髙池勝彦(賛同人代表、弁護士) 荒木田修(弁護士) 尾崎幸廣(弁護士、元釧路地検検事正) 樫八重真(弁護士) 勝俣幸洋(弁護士) 田中禎人(弁護士) 田辺善彦(弁護士) 土居健造(弁護士) 中島繁樹(弁護士、元福岡県弁護士会副会長) 原洋司(弁護士) 増田次郎(弁護士) 松本藤一(弁護士) ミツ角直正(弁護士) 森統一(弁護士) 吉川陽行(弁護士) 岡島 実(世話人、弁護士、元日弁連人権委副委員長) 西岡力(賛同知識人、麗澤大学客員教授)
韓国側
高永宙(賛同人代表、弁護士、元ソウル南部地検検事長) 朴仁煥(弁護士、元対日抗争期強制動員被害調査及国外強制動員犠牲者等支援委員会委員長) 金泰勳(弁護士、韓半島人権と統一のための弁護士の会常任代表) 石東炫(弁護士、元釜山地検検事長) 高栄一(弁護士) 張栽源(弁護士) 鄭善美(弁護士) 金基洙(世話人、弁護士、慰安婦像と戦時労働者像設置に反対する会共同代表) 李宇衍(賛同知識人、落星台経済研究所研究委員)