「佐渡金山は強制連行・強制労働の現場ではない、日韓研究者の声明文」をユネスコに提出しました。

皆様

 本年の4月11日に日本の強制動員真相究明ネットワークと韓国の民族問題研究所が佐渡金山は戦時中の朝鮮人強制連行と強制労働の現場であったと主張する声明文と共同報告書をユネスコ世界遺産委員会委員国、ユネスコ事務局、ユネスコの諮問機関で世界文化遺産登録の審査を担当するイコモス関係者宛に送付しました。歴史的事実に基づかない彼らの声明文は佐渡の歴史を歪めてしまうだけでなく、日韓関係にも悪影響を与えます。

 私たち歴史認識問題研究会と韓国の李承晩学堂は共同の声明文を作成し、5月23日にユネスコ世界遺産委員会に加入している21カ国のユネスコ代表部と国内委員会、イコモス事務局、ユネスコ事務局に送付しました。その際、歴認研が昨年発行した学術論文集『佐渡金山における朝鮮人戦時労働の実態』も一緒に送付しました。

 

   佐渡金山は強制連行・強制労働の現場ではない、日韓研究者の声明文
 本年 4 月 11 日に日本の強制動員真相究明ネットワークと韓国の民族問題研究所が佐渡金山世界遺産登録に関する声明文をユネスコに提出した。彼らは、佐渡金山戦時朝鮮人労働者の強制連行、強制労働の現場だと主張して、日本政府の佐渡金山世界遺産登録 申請がユネスコの精神に反していると主張した。
 しかし、彼らの主張は学術的に大きな問題がある。佐渡金山に関する日本と韓国の最新の研究では、一次史料から強制連行、強制労働が明確に否定されている。戦時中の朝鮮半島で佐渡金山での労働者を募集したところ、一つの村で募集上限 20 名に対して 40 名の応募があったことが判明しており、朝鮮人が自主的に佐渡へ渡ったことが記録されている。佐渡の労働現場でも朝鮮人労働者は生活必需品の廉価販売、各種の福祉や娯楽 を受けており、賃金も日本人労働者と同じだった。労働契約の更新では報奨金も用意され、更新を望まない者は帰郷できていたことを証明する資料も残っている。
 彼らの主張の根拠はほとんどが近年の証言でしかない。証言を調べると強制連行や強制労働を証明できる内容は存在せず、辻褄の合わないものが多い。こうした証言の中には 2005 年に韓国政府が朝鮮人元労働者やその遺族に対して補償金を渡す事業の際に出現したことに注意しなければならない。金銭が絡んだ証言には十分な検証が必要だが、彼らはそれを行っていない。強制連行・強制労働の主張は根拠薄弱だ。
 さらに、世界遺産登録の申請内容は江戸時代の佐渡金山であり、日本が朝鮮半島を統 治していた時期は含まれていない。したがって、朝鮮人強制連行・強制労働があったかどうかは世界遺産登録の判断基準にはならない。一部の人々は、朝鮮人労働者の問題を 隠蔽するために江戸時代に限定したと主張しているが、全くの事実誤認である。佐渡市は海外の専門家たちの助言を受けて、日本の独自性を有する江戸時代に限定して申請を出したに過ぎない。強制動員真相究明ネットワークと民族問題研究所は江戸時代における強制労働も指摘しているが、これは無宿人の労働のことを指していると思われる。無宿人とは親から勘当された者や寺社の宗門人別帳から除外された人々のことであり、働く手段を失った無宿人を佐渡金山は 100 年間で 1874 名を受け入れた。一方で、当時は自分の田畑を捨てて佐渡金山で働こうとした者が非常に多く、佐渡への渡航を禁止する法令が制定されるほどだった。無宿人の労働は佐渡金山全体でほんの一部にすぎず、大部分は自主的に佐渡に渡った労働者だった。したがって、江戸時代における強制労働という主張は悪意のある偏見だ。
 産業遺産情報センターの端島(軍艦島)展示に関しても強制連行と強制労働を主張する人々の根拠が薄弱だ。代表的な例は端島炭鉱の元労働者を自称する具然喆(グ・ヨン チョル)の証言だ。彼は 1939 年に 9 歳で軍艦島に来て、6 年間住んだと主張しており、その期間で朝鮮人労働者が虐待されていた現場を目撃したと述べている。しかし、彼は 見えるはずのない島を見たと言ったり、朝鮮人労働者の食事の世話は日本人兵士が行っていたなどと事実に反した内容を話している。自分は成績優秀で学校で級長だったと話しているが、島で一つしかない学校に在籍していた同級生の元島民たちは彼のことを知らないと断言しており、記録もない。端島に滞在した証拠がない証言者が支離滅裂な話をしているだけであり、端島が朝鮮人の強制連行と強制労働の現場であることは立証されていない。立証されていないことを展示しないということが批判の理由になるだろう か。
 私たち日韓の研究者は 2022 年 3 月 23 日に東京で学術セミナー「佐渡金山における朝鮮人戦時労働の実態」、同年 7 月 9 日と 7 月 10 日に、東京と新潟で日韓学術講演会「佐渡金山と朝鮮人戦時労働者」を開催して、強制連行と強制労働説を学術的に批判し、その成果を冊子にした。
 学術的に否定された根拠薄弱な強制連行・強制労働説を採用する必要はない。強制動 員真相究明ネットワークと民族問題研究所は自由、平等、民主主義の理念を無視し、歴史を歪曲している。本来ならば世界遺産登録の判断材料にならない朝鮮人労働者を無理やり論争の材料にして佐渡金山を不当に貶める彼らこそが日韓友好阻害の原因であり、ユネスコの理念にも反している。ユネスコが冷静に議論を俯瞰し、理性的な判断を下す ことを望む。
              2023 年 5 月 23 日
              日本・歴史認識問題研究会 会長 西岡力
              韓国・李承晩学堂 校長 李栄薫

 

 

 ※以下より声明文の日本語版と英語版を閲覧・ダウンロードできます。

 ・佐渡金山は強制連行・強制労働の現場ではない、日韓研究者の声明文

 ・The Sado Mines Were Not a Site of Forced Mobilization or Forced Labor